デジタル会員証やクーポンの導入を検討していると、どちらのウォレットに対応させるかという選択を迫られます。Apple WalletかGoogle Walletか、この分岐点で立ち止まり、自社の顧客が実際にどちらを使っているのか、選択を誤ったら作り直しになるのではと悩む担当者は少なくありません。
日本市場における現実的な答えは「Apple Walletを主軸にしつつ、Google Walletも用意する」です。理由は機能比較表が示すよりずっとシンプルです。このガイドでは、2つのウォレットの実質的な違い、日本の顧客がどちらのプラットフォームにいるのか、そして両方に二重の工数をかけずに対応する方法を解説します。あわせて、Pushwoosh Wallet Passesが「2つの実装」を「1つの設定」に変える仕組みも紹介します。
Apple Wallet vs Google Wallet:日本の事業者にとっての現実的な答え
一般消費者向けにビジネスを展開している場合、顧客はiPhoneとAndroidに分かれており、片方のウォレットにしか対応しないパスは、対応しない側の顧客からは見えない存在になります。「どちらか一方を選べばよい」で終わる比較は、たいてい反対側のプラットフォームを使っている顧客の存在を見落としています。
ビジネス用途のパスに関して言えば、両ウォレットはほぼ同じことができます。どちらもロイヤリティカード、クーポン、イベントチケット、搭乗券に対応し、どちらもオンラインで自動更新され、どちらもリンク・QRコード・アプリ内から追加できます。実質的に差が出るのはリーチと、いくつかのデザイン・配信面の細部であり、どちらかが機能的に劣っているわけではありません。
そのうえで検討すべき本質的な問いは1つです。両方のウォレットを、二重に開発することなくどうカバーするか。まず違いを整理し、そのあとで解決策を示します。
機能比較表
| 機能 | Apple Wallet | Google Wallet |
| 対応プラットフォーム | iOSのみ(iPhone、Apple Watch) | Android、Wear OS、加えてWeb/アプリ内経由で限定的にiOSも対応 |
| ビジネス向けパス種別 | ロイヤリティ、クーポン、チケット、搭乗券 | ロイヤリティ、クーポン、チケット、搭乗券 |
| オンライン更新 | 対応 | 対応 |
| デザインの一貫性 | Appleデバイス間で統一 | Androidメーカーごとにばらつきあり |
| 配布方法 | リンク、QR、アプリ内「Apple Walletに追加」 | リンク、QR、アプリ内「Google Walletに追加」 |
| 位置情報アラート | 対応 | 対応 |
| 取得できるデータ | アプリ内行動のみ、決済データは含まない | アプリ内行動のみ、決済データは含まない |
対応プラットフォーム
Apple Wallet
iOSのみ(iPhone、Apple Watch)
Google Wallet
Android、Wear OS、加えてWeb/アプリ内経由で限定的にiOSも対応
ビジネス向けパス種別
Apple Wallet
ロイヤリティ、クーポン、チケット、搭乗券
Google Wallet
ロイヤリティ、クーポン、チケット、搭乗券
デザインの一貫性
Apple Wallet
Appleデバイス間で統一
Google Wallet
Androidメーカーごとにばらつきあり
配布方法
Apple Wallet
リンク、QR、アプリ内「Apple Walletに追加」
Google Wallet
リンク、QR、アプリ内「Google Walletに追加」
取得できるデータ
Apple Wallet
アプリ内行動のみ、決済データは含まない
Google Wallet
アプリ内行動のみ、決済データは含まない
この表からも、両対応が基本方針になる理由がわかります。機能面でどちらか一方を選外にするほどの差はありません。違いが出るのは細部であり、以下で解説します。
デザイン・ブランディングの制約
Appleは固定されたパステンプレートを採用しているため、どのiPhoneでもカードの見た目が統一され、レイアウトを自由に調整できる余地は少なくなります。Googleのテンプレートはより柔軟で、デザインの自由度は高い一方、多種多様なAndroid端末で見た目が完全に同一になる保証は弱くなります。
ブランドにとってこれは「統制」と「リーチ」のトレードオフです。Appleは予測可能な見え方を、Googleは見た目の一貫性を多少犠牲にした広いリーチを提供します。どちらもロゴ、色、主要な項目は保持されるため、致命的な欠点にはなりません。
更新とプッシュ通知の挙動
どちらのウォレットもオンラインでパスを更新するため、ポイント残高やゲート情報の変更は、顧客が何も再インストールしなくても反映されます。違いが出るのは更新時の通知の扱いです。Appleはウォレット自体に紐づいた通知に限定され、スタイルの自由度も低めです。Googleは更新アラートの見せ方にやや柔軟性があります。
実務上、エンゲージメントの主戦場になるのはウォレット標準の通知ではなく、自社が送るプッシュ通知です。ここでこそ、ウォレットのネイティブ機能よりもメッセージングプラットフォームの実力が問われます。
配布方法:インストールリンク、QR、アプリ内
両プラットフォームとも、顧客にパスを渡す方法は同じ3つです。Webリンク、スキャンするQRコード、アプリ内の「ウォレットに追加」ボタンです。ボタンのラベルと対象ウォレットはプラットフォームごとに異なりますが、仕組み自体は同一です。
レシート、店頭サイネージ、アプリ画面、メールといった配布導線に両方のボタンを並べて置いておけば、顧客のデバイスが自動的に適したものを選びます。
市場シェア:日本の顧客は実際どちらにいるのか
「両方」という結論を後押しするのが市場シェアです。日本はiPhoneのシェアがおよそ65〜70%と、世界的に見ても際立ってiOS優位な市場です。Androidは残りの30〜35%程度にとどまります。世界全体で見ると比率は逆転し、Androidが70%前後、iOSが27〜29%程度とされています。これらはあくまで現時点の目安であり、四半期ごとに数ポイント変動する点にご留意ください。
ここから導かれる結論は2つです。第一に、日本ではApple Walletへの対応を省略すると、顧客の大多数を占めるiPhoneユーザーへのリーチを失うことになり、これは他の多くの市場よりも影響が大きい選択です。第二に、それでもGoogle Walletを完全に省いてよいわけではありません。国内のAndroidユーザーに加え、訪日インバウンド需要でAndroid比率が高い国からの旅行者にもリーチしたい場合、Google Walletの対応がその接点を担います。
つまり日本の事業者にとって、Apple Walletを見送ることは、世界の多くの市場よりも大きな機会損失になります。一方でGoogle Walletを完全に切り捨てると、国内Androidユーザーとインバウンド層の両方を取りこぼします。優先順位はApple Wallet、次いでGoogle Walletという順番になりますが、「両方」という結論自体は変わりません。
では、どちらのウォレットを選ぶべきか
両方です。ただし日本市場では、優先度としてApple Walletを先に整え、Google Walletで取りこぼしを防ぐという順番が現実的です。残る本当の論点は、それをどれだけ効率よく実現できるかです。
自社で個別に実装する場合、両ウォレットへの対応にはApple側のPassKitとGoogle側のWallet APIという、それぞれ独自の設定・証明書・保守が必要な2本の連携が発生します。これが、多くのチームが結局どちらか一方だけを選んで終わらせたくなる理由です。
Pushwoosh Wallet Passesなら、1つの設定でApple WalletとGoogle Wallet両方のパスを発行・更新できます。カードのデザインは一度だけ行い、リンクまたはQRコードで配布すれば、あとは顧客のデバイス側が処理します。二重実装という課題が、顧客の一部を切り捨てる理由にはならなくなります。
Pushwooshなら1つの設定で両ウォレットに対応
すべての顧客にリーチするために、二重に開発する必要はありません。Pushwoosh Wallet Passesは1つのダッシュボードからApple WalletとGoogle Walletのパスを発行・更新できるため、ロイヤリティカードやクーポンが顧客層全体で機能します。PushwooshはSOC 2 Type IおよびISO 27001:2022を取得し、GDPRにも準拠しているため、両プラットフォーム間でやり取りされる顧客データも安心して管理できます。
よくある質問
単一ファイルとしては対応できません。各ウォレットが独自のパス形式を使用しているためです。それぞれの規格に合わせたバージョンを用意する必要があります。ただし、Pushwooshのようなプラットフォームを使えば、1つの設定から両方を生成・維持できるため、手作業で2つの連携を構築するのではなく、パスを一度作成するだけで済みます。
端末シェアで見ると、日本はiPhoneがおよそ65〜70%を占める、世界でも有数のiOS優位市場です。そのためApple Walletのほうがより多くの端末に存在します。ただしAndroidも国内の一定層に加え、訪日インバウンド層にも利用されているため、両方に対応しておくのが安全な選択です。