商談、顧客インタビュー、そして解約時のヒアリング。こうした会話から本当に価値のある顧客インサイトを取り出すことは、多くの企業にとって今も大きな課題です。
解約理由、機能要望、顧客が使い続けている理由。どれも通話の中で語られますが、その大半は録画の中に眠ったままCRMに届かず、セグメントやライフサイクル施策に活かされることはありません。結果として、先回りしたリテンション施策やパーソナライズされた顧客エンゲージメントの機会を逃してしまいます。
本記事では、CRM、プロダクト、グロースの担当者が、通話をリテンションに使えるデータへ変えるためのAI議事録ツールを選べるよう、おすすめ7選を比較します。日本のアプリ事業者にとって重要な「日本語対応」と、社内の情シス審査で問われやすい「データの扱い」にも触れていきます。
リテンション担当者にもAI議事録ツールが必要な理由(営業だけではない)
AI議事録ツールを最初に取り入れたのは、商談を記録したい営業チームでした。しかしリテンション担当者には、通話を記録する理由がさらに多くあり、通話の種類ごとにCRMの異なる項目へ情報を届けられます。
- 解約時や退会時のヒアリング 👉🏻 解約理由。 「高すぎる」「機能Xがない」といった声は、セグメントに使えるプロパティになります。解約前の似た顧客に先回りして働きかける根拠にもなります。
- オンボーディング通話 👉🏻 定着を阻む要因。 新規顧客はどこでつまずいたかを話してくれます。そこが、オンボーディングフローで後押しが必要なステップです。
- 更新時の通話や定例レビュー(QBR) 👉🏻 リスクのシグナル。 更新へのためらいは早期の警告サインです。シート追加の相談はアップセルの機会です。
- 顧客インタビューとVoC 👉🏻 メッセージ設計。 顧客が自分の課題を説明するときの言葉こそ、キャンペーンで使うべき言葉です。
CRMとリテンション業務向けAI議事録ツールの選び方
営業向けのレビューが問うのは、ほぼ1点だけです。「通話を商談に記録できるか」。リテンション担当者には、もっと幅広いチェックリストが必要です。
- ボット型かボットレス型か。 ボット型は参加者として会議に見える形で加わります。ボットレス型は自分のデバイスから録音します。ボット型は録音への同意が明確になり、ボットレス型はデリケートな解約ヒアリングでも相手に圧迫感を与えにくくなります。
- CRMへの書き戻し。 コンタクトにメモを添付するだけのツールもあれば、「解約理由」「機能要望」のようなCRMのカスタム項目に値を入れられるツールもあります。セグメント配信を可能にするのはカスタム項目です。
- 対応言語。 顧客がスペイン語、ポルトガル語、日本語で話すなら、6言語しか対応していないツールでは足りません。日本語の通話が中心なら、日本語対応は最初に確認すべき項目です。
- 通話をまたいだ検索。 いずれ「今四半期、価格に触れた顧客は何人いたか」を知りたくなります。40件の文字起こしを読み返すことも(理論上は)可能ですが。
- エクスポート、Zapier、API。 自社のツール群とのネイティブ連携がない場合は、インサイトを外に出すきれいな手段が必要です。
- 料金体系。 シート課金はチーム全員が録音すると急速に膨らみます。ファイル単位の課金は、録音量は多いが利用者は少ないチームに向いています。
CRMとリテンション担当者向けAI議事録ツールおすすめ7選
| ツール | おすすめの用途 | 録音方式 | CRMへの書き戻し | 対応言語 | 無料プラン | 有料プラン |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Hypescribe | 通話や動画の要約とアクションアイテム | ボット+ファイルとリンクのアップロード | エクスポート経由(DOCX、Markdown、Google Docs) | 99以上 | 無料トライアル: 月3ファイル | $6.99/月〜 |
| Fireflies.ai | 多言語チームとCRM自動入力 | ボット+ボットレスのデスクトップアプリ | HubSpot、Salesforce、Pipedrive。BusinessでAutofill CRM | 100以上 | あり | $10/シート/月〜(年払い) |
| Fathom | 無料で始めたい場合とHubSpotの項目マッピング | ボット+ボットレス(Mac、ベータ) | HubSpotのカスタム項目。Salesforceは順次提供中 | 38 | あり | $15/ユーザー/月〜(年払い) |
| Avoma | 会話分析が必要なCSチーム | ボット | Salesforce、HubSpot、Pipedrive、Zohoなど。アドオンで双方向の項目更新 | 70以上 | 14日間トライアル | $19/シート/月〜(年払い) |
| Otter.ai | 英語中心の通話向けの低価格な選択肢 | ボット+ボットレスのデスクトップアプリ | Salesforce、HubSpot。Enterpriseでカスタム項目 | 6 | あり | $8.33/ユーザー/月〜(年払い) |
| Granola | ボットレスと対面の打ち合わせ | ボットレス | HubSpot、Attio、Affinityにメモ。SalesforceはZapier経由 | 31(デスクトップ) | あり | $14/ユーザー/月〜 |
| tl;dv | EUでのデータ保管とWebhookによる自動化 | ボット+ボットレスのデスクトップアプリ | HubSpot、Salesforce、Pipedrive、Zohoで項目マッピング | 30以上 | あり | $18/シート/月〜(年払い) |
1. Hypescribe: 顧客インタビュー、VoC、長さを問わない録音に最適な低価格ツール
Hypescribeは、通話、インタビュー、動画の録音を、文字起こし、要約、タスクリストに変換します。処理が終わるとすぐに要約とアクションアイテムが手に入るため、解約ヒアリングの当日中にフォローアップを割り振れます。
リテンション担当者向けの主な機能:
- 議事録ボット。 Zoom、Google Meet、Microsoft Teamsの通話に参加して録音するので、誰かが「録画」を押さなくてもオンボーディングや更新の通話を記録できます。
- アップロードとリンク。 最大2 GBの音声や動画をアップロードするか、YouTubeのほか、Zoom、Google Drive、Instagram、TikTokを含む14のプラットフォームのリンクを貼り付けられます。アプリについての顧客の動画レビューもVoCの素材になります。
- 99以上の言語。 自動言語判定により、さまざまな市場の顧客との通話に対応します。
- 概要とAIアシスタント。 録音ごとにアウトラインとタスクリストが作成されます。GPT、Claude、Grok、DeepSeekをベースにしたAIアシスタントに、録音の内容について質問することもできます。
- エクスポート。 TXT、SRT、PDF、DOCX、Markdown、またはGoogle Docsへ直接出力できます。
料金: トークン制で、1トークン=長さを問わず1ファイルの文字起こしです。無料トライアルは月3ファイル(各1時間まで)、クレジットカード不要。Starterは$6.99/月(30トークン)、Proは$7.99/月(60トークン、議事録ボットでの会議は月10件)、Ultraは$12.99/月(300トークン、議事録ボットでの会議は月30件)。年払いにすると約45%安くなり、未使用のトークンは繰り越されます。
メリット:
- トークン制の料金のため、特に長時間の録音でコスト効率が高い
- 入力手段が幅広い(ファイル、リンク、ライブ会議)
- 多言語対応の確かな文字起こしとAI要約機能
- クレジットカード不要の無料トライアルあり
制限事項:
- 議事録ボットでの会議数はプランごとに上限あり(月10件または30件)
- インサイトはエクスポート経由でCRMに移るため、項目へのマッピング手順を用意する必要がある
2. Fireflies.ai: 多言語チームとCRM自動入力に最適
Fireflies.aiは、本記事のツールの中でも特に多くの会議プラットフォームやCRMと連携できます。ボットでZoom、Google Meet、Teams、Webexなどを録音し、デスクトップアプリとGoogle Meet用のChrome拡張機能ならボットなしで録音できます。
リテンション担当者向けの主な機能:
- CRM同期。 HubSpotではコンタクト、会社、商談にメモ、要約、アクションアイテムが記録されます。SalesforceとPipedriveでは、該当するレコードにメモが記録されます。
- Autofill CRM(Businessプラン)は、通話の内容からCRMレコードを更新します。
- AskFredで、すべての会議を横断して検索できます。
- 会話インテリジェンス(BusinessとEnterprise)で、感情分析とトピックの追跡が加わります。
- 100以上の言語に対応し、Businessでは多言語モードも利用できます。
料金: 無料プランあり。Proは$10/シート/月、Businessは$19/シート/月(年払い。月払いではそれぞれ$18と$29)。Enterpriseは$39/シート/月で、年払いのみです。
メリット:
- CRM連携の幅が最も広く、Intercomやmonday CRMにも対応
- 対面での録音に使えるモバイルアプリ
- すべてのプランでAPIを利用可能
制限事項:
- 感情分析とCRM自動入力はBusinessプラン以上
- カスタマーサクセス基盤とのネイティブ連携はなし
3. Fathom: 無料で始めたい場合とHubSpotの項目マッピングに最適
Fathomは、無料プランで録音、文字起こし、即時のAI要約を無制限に利用できます。アイデアを試したい小規模なリテンションチームにとっては、予算の稟議を通す前に検証できるのが利点です。
リテンション担当者向けの主な機能:
- HubSpotの項目マッピング。 要約とアクションアイテムが該当するレコードに記録され、Businessでは要約のセクションをHubSpotのカスタム項目にマッピングできます。SalesforceへのマッピングはBusinessのDeal View経由で、現在も順次提供中です。
- キーワードアラートとトラッカー(Teamプラン)で、リスクを示す表現や競合への言及を検知します。
- ボットなしモード(Mac)では、文字起こしまたは音声のみを記録します(ベータ)。
- APIとWebhookをすべてのプランで利用できます。
料金: 無期限の無料プランあり。Premiumは$16/ユーザー/月、Teamは$15/ユーザー/月(最低2ユーザー)、Businessは$25/ユーザー/月(年払い)。月払いは約25%高くなります。Enterpriseは個別見積もりです。CRMの項目同期とDeal ViewはBusinessに含まれます。
メリット:
- 無料プランで録音が無制限
- サポート主導のチーム向けにPylonとのネイティブ連携
- SOC 2 Type IIとHIPAA
制限事項:
- 無料プランでは高度な要約テンプレートが月5通話まで
- Androidアプリなし
4. Avoma: 会話分析が必要なCSチームに最適
Avomaは、議事録に加えて分析を求めるチーム向けに作られています。ボットで録音し、Aircall、Dialpad、RingCentralなどの電話システムとも連携するため、CSチームが電話で顧客対応している場合に役立ちます。
リテンション担当者向けの主な機能:
- CRM連携: Salesforce、HubSpot、Zoho、Pipedrive、Copper、Zendesk Sell。Startupプランからメモが自動保存されます。
- CRM項目の双方向更新(Revenue Intelligenceアドオン)。
- 40以上のSmart Topicsを標準で備え、Conversation Intelligenceアドオンでカスタムトラッカーも追加できます。
- Ask Avomaで、すべての通話を横断して検索できます(アドオンまたはEnterprise)。
- 70以上の言語で文字起こしと翻訳に対応します。
料金: 無料プランはなく、14日間のトライアルあり。Startupは$19/シート/月、Organizationは$24/シート/月(年払い)。Enterpriseは$39/シート/月で、年払いのみです。OrganizationとEnterpriseではAPIとWebhookが加わり、HIPAAはEnterpriseのみ対応します。アドオンは年払いでそれぞれ$29/シート/月。料金がかかるのは「録音者」のシートだけです。
メリット:
- 多数の通話から解約のパターンを見つけるための分析が最も充実
- ビデオ会議に加えて、電話システム経由の通話も録音可能
- SOC 2 Type IIとISO/IEC 42001
制限事項:
- ボットなしの録音はZoomとWebexのクラウド録画経由のみ
- Google MeetとTeamsではボットが必要
5. Otter.ai: 英語中心の通話向けの低価格な選択肢
Otter.aiは、年払いの場合、本記事の中で最もシート単価が低いツールです。議事録ボットがZoom、Meet、Teamsに参加し、デスクトップアプリならボットなしで録音できます。
リテンション担当者向けの主な機能:
- SalesforceとHubSpotの同期はProプランから(メモを同期できるユーザー数に上限あり)。Enterpriseでは、次のステップ、課題、要約をSalesforceのOpportunityとHubSpotのDealのカスタム項目に書き込めます。
- Otter AI Chatが会話について質問に答えます(プランごとに上限あり)。
- ZapierはProから、APIとWebhookはEnterpriseで利用できます。
料金: 無料のBasicプラン(月300分、1会話あたり30分まで)。Proは$8.33/ユーザー/月、Businessは$19.99/ユーザー/月(年払い。月払いではそれぞれ$16.99と$30)。
メリット:
- 導入価格が低い
- MacとWindowsでボットなしのデスクトップ録音が可能
制限事項:
- 対応言語は英語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、日本語、中国語(簡体字)の6つのみ
- カスタム項目への書き戻しはEnterpriseが必要
6. Granola: ボットレスと対面の打ち合わせに最適
Granolaはボットを一切使いません。デバイス上で音声を取得するため、退会理由のヒアリングのようなデリケートな会話で最も目立たない選択肢です。デスクトップ、iOS、Android、Apple Watchのアプリがあり、対面の打ち合わせにも使えます。
リテンション担当者向けの主な機能:
- HubSpot連携(Businessプラン)で、コンタクト、会社、商談にメモを追加します。AttioとAffinityにもネイティブ対応しています。SalesforceとPipedriveはZapier経由で接続します。
- メモを横断するAIチャットで、会議をまたいだパターンを見つけられます。
- 31言語(デスクトップ)、モバイルでは17言語に対応します。
料金: 無料のBasicプラン(メモの履歴は30日間)。Businessは$14/ユーザー/月(月払い)、Enterpriseは$35/ユーザー/月からです。
メリット:
- 会議にボットが入らない
- 文字起こし後に音声が削除される
- CSチーム向けにZapier経由でGainsightと接続可能(Businessプラン)
制限事項:
- CRMレコードへのメモ書き込みのみで、カスタム項目へのマッピングはなし
- 無料プランではAPIと連携機能なし
7. tl;dv: EUでのデータ保管とWebhookによる自動化に最適
tl;dvはEU内でデータを保管し、顧客データをAIの学習に使わないと明言しています。欧州の顧客を抱えている場合や、情シス審査でデータの保管場所を問われる場合、多くの質問に先回りして答えられます。
リテンション担当者向けの主な機能:
- CRMの項目マッピングで、HubSpot、Salesforce、Pipedriveのカスタム項目に値を入れられます。Zohoへの記録にも対応します。
- Webhook(Pro以上)が、会議や文字起こしの準備ができたタイミングで発火します
- Ask tl;dv AIで複数の会議を横断して質問できます(Businessでは無制限、FreeとProでは複数会議の利用が10回まで)
- ボットなしのデスクトップアプリ(MacとWindows、音声のみ)
- 30以上の言語。
料金: 録音無制限の無料プラン(AIメモは10会議まで、その後は冒頭10分のみ)。Proは$18/シート/月、Businessは$29/シート/月(年払い。月払いではそれぞれ$29と$39)。
メリット:
- 全ユーザーにEUでのデータ保管とGDPR対応
- 項目マッピングとWebhookで自動化が簡単
制限事項:
- 無料プランの上限は月ごとではなく累計
- カスタマーサクセス基盤とのネイティブ連携はなし
通話メモをリテンションのシグナルに変える方法
議事録ツールが提供するのは文字起こしです。リテンション施策が始まるのは、その文字起こしによって「誰にどのメッセージを送るか」が変わったときです。次の4ステップは、本記事のどのツールでも使えます。
- 1
シグナルを短いリストにまとめる
チームが重視するシグナルを4〜6個に絞ります。解約理由、機能要望、競合への言及、オンボーディングのつまずき、更新リスクなどです。それ以上に増やすと、誰も一貫してタグ付けしなくなります。
- 2
各シグナルをCRMのプロパティに対応させる
「解約理由: 価格」を項目の値として保存します。メモの文章に埋もれたままでは、セグメントの条件に使えません。カスタム項目へのマッピングに対応したツールなら自動で行えます。それ以外のツールでも、通話ごとの短い作業で済みます。
- 3
シグナルを毎週振り返る
シグナルごとに通話を横断検索して件数を数えます。1週間に「高すぎる」が5件あれば、それは価格を見直すべき議題です。1件ならただのエピソードです。
- 4
プロパティをセグメントに活かす
シグナルがプロパティになれば、それはセグメントになります。足りない機能に言及した顧客にはその機能のリリース時に告知を送り、更新時にリスクありと判定されたアカウントには期日前に引き留めのオファーを届けられます。プッシュ通知、アプリ内メッセージ、メールなど、顧客が反応しやすいチャネルで配信しましょう。
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顧客との通話を録音する際の同意とプライバシーの基本
既存顧客の通話を録音し、その言葉を調査に再利用する場合は、まずいくつかの基本ルールを決めておきましょう。
- 録音していることを相手に伝える。 通話録音に関する法律は国や州によって異なり、多くの地域では参加者全員の同意が必要です。見えるボットは助けになりますが、口頭でも伝えましょう。
- AIの学習ポリシーを確認する。 一部のベンダーは、オプトアウト可能な形で、匿名化した顧客データを自社モデルの学習に使います(Fathom、Otter、Granola)。tl;dvのように、顧客データを学習に使わないと明言しているベンダーもあります。社内のセキュリティ審査に備えて、この点は導入前に確認しておくと安心です。
- 録音の保存期間を決める。 元ファイルを自動で削除するツールもあります。Hypescribeは処理後に元のメディアを削除し、Granolaは文字起こし後に音声を削除します。
- 閲覧できる範囲を制限する。 解約ヒアリングには請求情報や不満の声が含まれることがよくあります。すべての録音を全社に公開する必要はありません。
よくある質問